【10/1(水)『マネーバイアス』をほどいて見つける、わたしの‟本当の豊かさ”』 ~共感と協同でつくる、わたし達とお金の未来~】レポート
2025年10月1日、日本橋のブックラウンジKableさんにて、『マネーバイアス』著者のピーター・カーニック氏を招いたトークイベント「『マネーバイアス』をほどいて見つける、わたしの‟本当の豊かさ”」が開催されました。「お金に関する思い込み」を意味する『マネーバイアス』をテーマに、著者、翻訳者、実践者たちがそれぞれの視点から意見を交わしました。
会場には「いのちを取り戻す」ブックフェアがあり、マネーバイアスによって分断されてしまう「いのち」を取り戻す様々な可能性や選択肢を感じられました。

童心にかえるアイスブレイク
会場の入り口には縁日コーナーが設けられ、風船や射的などが並び、来場者を和やかに迎えました。受付では色とりどりのオモチャの中から、自分の心が惹かれたオモチャを選びました。参加者はペアになって「オモチャのどこに心惹かれたのか?」を語り合い、童心にかえるアイスブレイクが行われました。






また、隣の人と拍手を贈り合う「拍手おくり👏」が実施され、会場全体がリラックスした雰囲気の中で開会しました。

ピーター氏も屋台で折り紙のザリガニを釣りあげようと遊んでいます(^^)

ピーター氏、無事に大成功です!
オープニングトーク前半:お金を過剰に信じていると何を失うのか?
オープニングトーク前半では、『マネーバイアス』著者のピーター・カーニック氏と、PKS(ピーター・カーニック・システム)プラクティショナーであり、監訳者・翻訳者の吉原史郎氏によるトークセッションが行われました。
吉原氏からの問い「私たちがお金を過剰に信じていると、何を失うのでしょうか?アイスブレイクでみんなで思い出した童心。人生の熱量や人や自然とのつながり、人生における本当の豊かさなどが浮かんできます。『マネーバイアス』の出版背景と重ねて、教えてください」にピーター氏が答えていきます。


ピーター氏は、「お金を過剰に信じていると人はいのち、人生そのものを失う」と述べました。
また、「人はお金の話をするときに笑顔を失う。それは、お金が『恐れ』と結びついているから」とも述べました。さらに、「お金を真の愛や信頼とともに手渡すと、そこに『いのち』が戻る」と語り、 お金を通じて関係性を再構築することの重要性を強調しました。
吉原氏は、翻訳を通して感じた視点として、 「お金は人と人とのつながり、自分たちの熱量自体を隠してしまう性質がある」と指摘し、 経済の中に『人間的な物語』を取り戻す必要性について述べました。
オープニングトーク後半:身体から広がるインナーソースでつながりあう
続いて、PKSプラクティショナーであり、監訳者・翻訳者の宮慶優子氏も加わり、オープニングトークの後半が行われました。後半は、「人がマネーバイアス(お金への思い込み)を超えて、童心や好奇心、人生の熱量に溢れているとき、人や自然と豊かなつながりが生まれていること」について深めていきました。
ピーター氏は、人がマネーバイアスを超えて、人生の熱量に溢れている状態では、身体から広がる菌糸ネットワークである「*インナーソース」がイキイキとしていることが不可欠と述べました。

ピーター氏は、「*インナーソースとは身体から広がる菌糸ネットワーク。インナーソースを通じて、人生(ライフ)が持つユニークなビジョンや価値観(天命、パーパスなど)を育むためのインスピレーションなどを受け取る。これは、私たちひとり一人にとって、ユニークなこと」と述べました。
ピーター氏は下記の資料にあるように、「インナーソース」、「ライフソース」、「ある活動のソース(〇〇のソース)」と3つの言葉を使い分けています。「ある活動のソース」には、夕食会のソース、釣りサークルのソース、会社のソースなど、人生での様々な活動が含まれています。

会場では、提唱者のピーター氏から直接、「ライフソース・プリンシプル」について、全員で学びを深めました。「ある活動のソース」は会社のソースだけだと誤解されていた方もいて、インナーソースとライフソースの原点から学ばれていました。

吉原氏も、「ライフソースとは、インナーソースを通じて精神的なユニークさを発揮して自分の人生を生きられる存在であるということ。ピーターは、私たちは誰もがライフソースであると考えています。そして、ライフソース同士が、お互いに尊重し合い、協同するための実践知(プリンシプル)がライフソース・プリンシプル。
マネーバイアスが過剰となり、インナーソースがイキイキとしていない状態では、誰もが自分の人生のライフソースであるという大前提が見失われやすくなる。この状態では、ある活動のソース自身のマネーバイアスが過剰であることが多く、活動の本来の目的も見失われてしまうために注意が必要。
例えば、会社のソースの場合、利益やキャッシュフローへ過剰に注意が向かってしまうと、インナーソースがイキイキとせずに、人生の熱量やつながりが失われてしまう。その結果、会社が創造性を発揮できない場となってしまう」と補足しました。
更なる詳細は、『マネーバイアス』特別注釈(P.213〜P.217)に記載されています。尚、プリンシプルとは、理論や摂理ではなく、更新し続ける実践知という意味です。
でじでじさんも場づくりに加わり、参加者の皆さまと全員で、「自分のインナーソースがイキイキとしている場面」について、模造紙とインナーソースの絵を使って、描きながら、深めていきます。




第一部:人生の熱量が溢れている経営~ライフソース・プリンシプルの実践ストーリー~
第一部では、ピーター氏・吉原氏・宮慶氏と共に、「ライフソース・プリンシプル」を長く実践探究している、有限会社人事・労務 代表の矢萩大輔氏が登壇。吉原氏が矢萩氏に、インナーソースがイキイキとしながらの会社経営の今を、「ライフソース・プリンシプル」の視点で聴いていきます。
矢萩氏は、「遊ぶように働く会社が一番強い」と語り、自身が取り組む浅草・秋葉神社での稲作活動「よみがえれ!浅草田圃プロジェクトがスタート」や、社員と地域が共に学ぶ「田心カフェ」の実例を紹介しました。

「お金や利益を目的とするのではなく、『やりたい』という動機から始めることが、結果として地域や企業を活性化させる」と述べ、参加者の関心を集めました。


その後に行われた「ライフブース」でも、福祉、就労支援、設計・建設、シンクタンク、組織開発などの分野で活動する五人の経営者の皆さま達が、インナーソースがイキイキとしている写真と共に、会社経営の今を、矢萩氏と同じく、「ライフソース・プリンシプル」の視点で紹介。いずれの発表も、経済活動を通じた「自発性」「共創」「地域循環」を共通のキーワードとしていました。
(ライフブースにご登壇頂いた経営者の皆さま(あいうえお順))
赤池侑馬さん
(KEIPE 株式会社)
キーワード:
障がい者就労支援・社会課題の解決・農業・干し芋 etc

有野哲章さん
(社会福祉法人 蒼渓会)
キーワード:自律分散型での運営・
プレイフルファーム🍂🌱・ totonoipizza etc

黄韵奇さん
(パーパスデザイン・ライフ 株式会社)
キーワード:伴走型組織開発・経営層コーチング・
いえろーはうす渦🌀with 循環畑

小林一雄さん
(メトロ設計 株式会社)
キーワード:
建設コンサルタント・地域活性化・養蜂 etc

田嶋 康利 さん(一般社団法人 協同総合研究所)(ワーカーズコープのシンクタンク機関)
キーワード:協同労働・地域活性化・社会連帯経済 etc

第二部:共感から生まれる「いのちとお金の未来」
第二部では、ピーター氏と、非営利株式会社eumo 代表の新井和宏氏による対談が行われました。テーマは「お金に支配されない生き方」と「共感からはじまる経済」です。
新井氏も、入り口で福笑いを堪能!準備万端です(^^)


ピーター氏は「多くの人は『お金が足りない』と思い込んでいるが、実際に欠けているのは『つながり』である」と述べ、お金を中心に置くのではなく、関係性を軸にした経済観への転換を提案。
新井氏は、自身が提唱する「共感資本社会」の考え方に基づき、「経済は人と人との信頼で成り立つものであり、共感を媒介にした投資が次の時代をつくる」と述べました。
また「依存は悪いものではなく、互いに支え合うことが健全な社会の前提である」とし、『自律と依存の調和』を今後の課題として挙げます。



モデレーターを務めた吉原氏は、「ピーターの伝える自律とは、精神的なユニークさという意味での自律であり、物質的な自立ではないことが面白いと思っています。また、依存とは相互の支え合いであるため、誰もが相互に依存しながら(支え合いながら)、それぞれの精神的なユニークさを表現していくことが可能になります。その意味で、自律と依存は決して矛盾しない。なお、自律を阻むクローズドな共依存関係には注意が必要だと思っています」と補足。議論を深めていくうちに、このような自律と依存が共存する「人同士の関係性」から「つながり」が生まれているのであって、「つながり」こそが「豊かさ」に繋がっているという視点が提示されました。
ピーター氏が語った「お金を真の愛とともに手渡す」というメッセージや、新井氏の「共感による循環型経済」の構想など、参加者にとって『豊かさ』の定義を見直す契機となる内容でした。


